東松島市ふるさと教室
2024年6月に東松島市ふるさと教室が松島自然の家で行われ、東松島市立矢本東小学校の4年生の児童が参加しました。ふるさと教室は体験活動をとおして、 郷土の人々の生活や産業、歴史や伝統について学習させるとともに、郷土を愛する心や自然を大切にする心をそだてる ことをもくひょうに学校・市教育委員会、社会教育施設がれんけいして行っています。
今回はひねりパン作りと、ひねりパンで使用した小麦粉を生産しているアグリードなるせの櫻井さんによる小麦についての講話が行われました。
アグリードなるせは東松島市の農業生産法人です。アグリードなるせについて櫻井さんにお話を伺いました。
ーアグリードなるせでは小麦粉を含めてどのようなものを作っていますか
基本的には小麦、米、大豆、大麦を作っています。六次産業となると、育てた小麦を製粉して 小麦粉を製造し、バウムクーヘンを作っています。
ー生産品の特徴を教えてください
地産地消を心がけています。六次化の中でメインの小麦粉を使って生産しています。米も3品種やっていて、「ひとめぼれ」、「ササニシキ」、 地名の(野蒜)を取り入れて「のびるまい」を生産しています。
ー米や小麦粉などの主な出荷先を教えてください
直売所では地元の方によく買ってもらっています。遠方だと関東の保育園やホテルに出荷しています。基本的には自分たちで買ってもらえるように 営業をかけている形です。あとは地元にしかない付加価値のあるものを使いたいというお客さんもいらっしゃいます。
ー先ほどバウムクーヘンなどの話がありましたが、加工品には具体的にどのようなものがありますか
加工品は小麦だと小麦粉3種類ですね。薄力、中力、強力。米は精米して、 保育園とかレストランに発送しています。配送も宮城県内だったら対応していますね。 あと米粉も作っています。精米した米を石臼で挽きます。お米をすり合わせて篩にかけて粉にしていくという作業をしています。 丁寧に作業をするぶん、時間がかかるため、最高でも1週間で20キロしか作れません。そのため現在は小規模で販売 していますね。また、米粉のバウムクーヘンを作っています。そのバウムクーヘンにも米粉を使います。
ー生産者としてどのような思いで活動していますか
アグリードなるせは平成18年に設立されて、「農業(アグリー)をリードする」という意味でアグリードになったと聞きました。ヘリコプターやGPS付きのトラクターがあり、この間の田植えだと GPSを使って田植えしたところもありますし。どんどん新しい農業を取り入れるというか、そういう気持ちで活動しています。先輩たちが「アグリーをリードする」という気持ちで活動しているので、 その想いを引き継いでいこうとしています。これは会社の全員の共通認識でもあります。
ー今回の活動を含め、食に関する体験を通して何を学んでもらいたいですか
私自身はもともと石巻で水産の仕事をしていて、そのあとアグリードなるせでこのような仕事を するようになりました。子どもたちに自分の体が食でできることを、活動をとおして楽しみながら覚えてもらえればなと感じています。 陸の仕事も海の仕事も経験していますが、それは共通で思いますね。
ーこのような活動をとおしてどのように地域貢献していきたいですか
やっぱり地域での活動に参加していくことです。あとは、移住してくる方々が東松島市の食べものはおいしいと言ってくれるので、食べものを通じてこの東松島の良さを 発信できれば、と常に思っています。特にお米がおいしいとは言われますね。関東の方からお米の 精米したものが欲しいという依頼はおおいです。保育園やレストランからの依頼も全部関東方面からなので。全国的に どんどん発信できたらと思っていますね。六次産業化だと、通信販売にも力を入れています。通信販売で加工品もどんどん広げて いけたらなと思っています。ぜひ「東松島バウム工房」でしらべてみてください。
ー矢本東小学校以外にもこのような食育活動を行っていますか
工場に見学に来てくれる小学生はいて、その時にこうやって粉ができるよとかそういう話はしています。あと小学校の田植え体験はしています、みんなで泥まみれになりながら。
ーどのように矢本東小とのつながりができたのですか、やることになったきっかけはありますか
東松島市内小中学校の給食に納豆を出しています。給食センター、小学校とのつながりは結構多いかもしれないですね。 今後、活動も増えていくと思います。
ー東日本大震災で東松島は大きな被害をうけましたが、被災後はどのように立てなおしを行いましたか
私はその時まだこの仕事はしていなくて、海の仕事していました。やっぱり塩水はかぶってしまいました。今の野蒜の直売所がある場所の向かいのところは全部浸水して しまったようです。 その時に何をやったかというと、まだ加工施設はありませんでしたが、排水施設の確認をしたり、がれきとかゴミ、流れてきて たまった稲わらを自分たちで撤去したりしたそうです。あと、塩害の影響で3年間米を作れないという報道があったので、 「なるせ方式」と言われる除塩法を取り入れたという話を聞きました。 加工施設(NOBICO)ができたのは平成27年で、バウムクーヘンって年輪のように一層一層できているのですが、人と人とのつながりが木の年輪のようにできる、一層大事に、1人 1人 大事に、1人も取り残さない、そういう思いを込めてバウムクーヘンが作られるようになりました。震災が平成23年なので、その4年後に塩害の除去がおわって、そのあと加工施設を作りました。
ー最後に、今後の活動の展望がありましたら教えてください
個人的な意見も入ってしまうのですが、さらに六次産業化を進めて行きたいと思っていて、バウムクーヘンだけでなく、クッキーやスコーンなどの 新しい商品も作り出しています。まだ商品化はできていませんが、そういう小麦粉を使用した東松島ならではの、例えばブルーインパルスをからめるとか、新しい商品を作っていけたらなって思っています。 道の駅もできますしね。道の駅限定の商品も出せればいいなと考えています。
ふるさと教室の会場となった松島自然の家の遠藤さんにもお話をうかがいました。
ー自然の家ではどのような活動をしていますか
松島自然の家では、体験活動を通したクリエイティブチャレンジ(創造的試行活動)によって、新しい社会をつくる力の育成を目指した活動を 行っています。具体的にはテント設営・宿泊、キャンプファイヤーなどの「キャンプ活動」、海活動や宮戸島ウォークラリーなどの「自然に親しむ活動」、 はんごう炊飯、ひねりパンなどの「野外炊飯」、塩づくり、のりすき体験、カキむき体験などの「海のふるさと学習」、防災ウォークラリー、 簡易シェルターづくり、空き缶ランタンなどの「防災体験活動」などがあります。他の自然の家でもやっているようなプログラムに加えて、防災に力を入れた取り組みを行っていることが本所の 特徴になります。
ー本日行ったパン作り体験以外の食育の活動について教えていただきたいです
基本的なところで、野外炊飯でカレーや豚汁を作る学校があります。東松島市ののりやカキなどの食材を使った活動も行っています。それ以外に、防災クッキングということで、ポリ袋でご飯を炊いてみたり オムレツを作ってみたりすることがあります。 毎年、東松島市の小学校はふるさと教室の一環でカキむき体験やのりすき体験を行っています。 自分たちで釣ってきた魚を捌くという体験をした学校もあります。これらは、所員だけじゃなくて、地元の漁師さんなど地域の方々にも協力 してもらっています。今日のアグリードなるせさんもそうですね。
ー防災クッキングについて教えていただきたいです
災害時に役立つよう、身の回りのものを使った省エネ調理を体験していただいています。 ライフラインが止まったらどうするのかなども問いかけながら行っています。ポリ袋でご飯を炊く活動を小中学生が体験していくことが多いです。
ー東松島の食材とのかかわりはありますか
東松島市の野菜や海の食材を生かすようにしています。主催事業では地元で取れた魚や野菜を多く使っています。 小麦粉もアグリードなるせさんのものを使っていますし。あとは、ふるさと教室の中でのりすきやカキむき体験も行っています。「おいSEA!冬の奥松島」という地元の海の幸などのおいしいものを 食べながら参加者同士の交流と親睦をふかめましょうという主催事業もあります。
ー今後の活動の展望があれば教えていただきたいです
東松島市と協力しながら宮戸島の良いところ(場所や人材、食材など)を発掘し、新しいプログラムの開発もしていきたいと考えています。また、地元の人たちが気軽に 参加できるような活動もふやしていきたいところです。